第22回 マズローの欲求段階をネタにする 2001年10月
 本稿は2001年10月に書かれたものです。

▼マズローの欲求5段階説を、恋愛関係に導入してみよう、講座。

 一般的には、モチベーション論の中で語られることが多いこのモデル。いろーんな文脈で使われていて、巷でも有名なモデルです。恋愛論の本でも、時々、参照されているのを見かけます。

 ざっと俗説をまとめておくと、このモデルでは、人間の欲求を5段階(階層)に分けるところがポイントらしいです。ピラミッド構造になっています。
  • (5) 自己実現の欲求 よりよい自分でいたい(自己の成長)
  • (4) 承認の欲求 他人に認められたい(自我の欲求)
  • (3) 所属の欲求 仲間が欲しい(社会的欲求、親和的欲求)
  • (2) 安全の欲求 外敵から身を守りたい
  • (1) 生理的欲求 食べたい、飲みたい、寝たいとか。
 下から順に、欲求の最も基礎(前提)となるのが「生理的欲求」で、食事や睡眠、運動に対する欲求。

 「安全の欲求」は外敵から身を守りたい、不確実な状況を回避しようとする欲求。

 「所属への欲求」は、仲間を求めたり、集団への帰属を求める欲求。

 「承認の欲求」は、人から認められたいという欲求。

 最後の「自己実現の欲求」は、よりよい自分でいたいと願ったり、自分らしさを求める段階のことらしい(その他、マズローの原典を離れて諸説ある)

 ポイントは、低次の欲求が満たされると、より欲求が高次なものに移行する、という点にありそうです。

 私、個人的には、なぜこのマズローの図式が、こんなにも広く(孫引きも含めて)利用されているのかが不思議です。引用が引用を呼ぶ…っていう、構造がどこかにあるのでしょうか(私も人のこといえませんが…)。

▼今回は、このマズローの欲求5段階説を、恋愛講座的に敢えて「誤読」をしてみることにします。創造的誤読の一つの方法として、ピラミッドの要素を逆にしてみましょう。すると、どうなるか?最初に「自己実現」、最も高次な欲求に「生理的欲求」を理想とする「恋愛段階説」ができあがります(図左)。

 各階層別に、恋愛の「条件」を示してみましょう。
  • (1)自己実現=自分らしさを発揮させてくれそうな人
     初対面の直観的(直感的)な段階。「この人いいな」と思わせる背後には、「自己実現的」な予感がありそう。
  • (2)承認欲求=自分のありのままを認めてくれる人
     コミュニケーションを通して、相手と自分の関係を深めていく段階。相互にとって「自分を認めてくれる」存在は恋愛関係で極めて重要。
 いわゆるお互いを高めるような恋愛がしたい、っていうのはこの2つのことを指すことが多いですよね(もっとも、私の知る限り「お互いを高める」とは「自分にとって都合の良い」という意味でしかないような気がしないでもないのですが、細かい点はさておきましょう)。

 「自己実現」や「承認欲求」を高めてくれそうな人に続く条件が「所属欲求」や「安全欲求」です。恋が成就して、関係が長期化してくると、以下のこのような欲求を相手が満たしてくれることも、欠かせなくなってくるでしょう。
  • (3)所属の欲求=第三者に自慢できる人
     「自慢」という言葉は、ちょっとワーディングが微妙ですが、第三者にも認めてもらえる人、というのは、どこかしら重要な要素かもしれません(学歴があって、収入がある人の方が自慢できそうっていう話)。
  • (4)安全の欲求=私を守ってくれる人
     単なる安全というよりは、経済的な要素として捉えると、できるならお金に不自由しない生活をしたいよね、といった段階。
 確かにロマンチックラブ的には(1)や(2)も重要。でも、できれば(3)や(4)の要素もあるにこしたことがないっていうことです。ここまで価値観が合いそうだなってことが了解されると、最終的には(5)が成立するわけです。
  • (5)生理的欲求=生理的欲求を満たしてくれる人
     これ、別に説明するまでもないよね?
 以上、マズローの欲求段階(階層)を逆転させると、ロマンチックラブ的な恋愛モデルができあがることが判明しました(本当か!?)。

 今時、(1)や(2)がなくても(5)は成立するじゃないか、という話もありそうです。その場合は、図右側のモデル(生理的欲求重視型)が便利でしょう。自己実現や承認欲求よりも、生理的欲求が入ってくる場合を指します。あるいはマズローの段階説(階層)のピラミッドをそのまま当てはめても良さそうです。

 段階説っていうのは、実に奥が深そうです。

 以上、今回の恋愛講座は「モデルのいんちきな転用」講座にもなりました。読者の皆様にとって、創造的誤読を引き出せた…かしら。

▼追記
 2003年6月図の修正ならび誤字脱字等修正しました。
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