カテゴリー「今月の本」の97件の投稿

希望学と「やる気」学と、死に至る病もしくは絶望

▼新書『希望学』(2006年4月30日の日記三章)や、『働く過剰 大人のための若者読』(2005年11月5日の日記参照)と出会って以来、「希望学」のその後が気になっていたのだが、「希望学」プロジェクトの成果が東京大学出版会から4冊シリーズで刊行されることになったらしい。

 とりあえず、希望学1を購入し、読み進める。期待しただけの内容になっていて、素晴らしい。プロジェクトの成果に触発される。「絶望」ではなく「希望」が正面から論じられるようになったということ、それ自体の意味について考えてみたり。ついでに、10年くらい前に『死に至る病』(キルケゴールに言わせれば絶望=死に至る病)を読むのに難儀したことを思い返しつつ、内容をすっかり忘れてしまった忘却力(記憶喪失力)に軽く絶望。これもまた希望の裏返したいと思いたい。

 続編の希望学2は、東北人(注:私は宮城県育ちです)としては見逃せない釜石(岩手県)をフィールドとした研究とのことで、地域研究としても気になるところ。付箋やらメモやらたくさん取ったが、詳細はまた触れたい。

▼偶然だが、金井先生が『危機の時代の「やる気」学』も手に取る。希望学に「やる気」学。次は「勇気学」あたりがねらい目なのかなぁ。

追伸:アンパンマンも、手塚治虫の『青いブリンク』も、そういえば「勇気」がテーマ。アンパンマンの場合は、勇気は友だちであって、それ以上でもそれ以下でもないのかもしれないが…。「青いブリンク」は…ちとマニアック?

 こうやっていつも話題をはぐらかす癖を何とかせねばな…。

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2008年の本

▼今年も各領域で、良質の書籍と出会うことができた。自身の興味に近い領域では、『ラーニングアロン』と、『輿論と世論』の2冊。どちらも歴史的な変遷を追った著書で、多いに刺激となった。私自身の年齢を反映しているのかもしれないが、「歴史」や「系譜学」に興味を持つようになってきたのかもしれない。今さらだが、偶然にも、佐藤卓己氏の著書もしくは編著で、ちとびつくり。
▼仕事関係で「勉強になった」あるいは「刺激を得た」という意味では、ノーマンの『未来のモノのデザイン』と、『Googleを支える技術』の2冊。情報技術やデザインにおいて、「未来」を考える上で重要な内容が示されている。
 新書では、『ウチのシステムはなぜ使えない』はネタにはなるかな…。  分野は違うが、「勉強した」といえば入試についても勉強したのだった。古典を主としてあたっていたが、もともとは今年出た↓がトリガーだった。 ▼今年は、松下電器産業がパナソニックへと名前を変更し、そして三洋電機を子会社化するという、大きな出来事が起きた。松下の経営については、以前から興味を持っていたが、改めて松下に興味を持った1年でもあった。  仕事関係でジョブスを取り上げた関係で、『iPodは何を変えたのか?』は繰り返し読んだことも印象に残っているかな。
▼新書は、とくにあたりと言える本に出会えなかったのが残念。『大学「法人化」以後』は、「勉強になった」類。『最高学府はバカだらけ』『大学の教育力』などと併用して読むと、位置づけが分かりやすいかもしれない。  古書復権という点では、モースの『贈与論』の新装版。
 サイエンスでは、『惑星地質学』に圧倒された。 
  • 宮本 英昭, 橘 省吾, 平田 成, 杉田 精司(2008). 惑星地質学. 東京大学出版会
▼一般書では、平田オリザ氏や内田樹先生の本は相変わらず面白い。  以上、脈絡もありませんが、本年の読書の振り返りでした。

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今月の本

▼久々に復活の「今月の本」。今月は、予算不足もあって、図書館で選んで気に入った本を購入…という流れになってしまったのだが、いくつか素晴らしい本と出会うことができた。

▼一般書としては、以下の2冊
▼新書としては、同以下2冊(お仕事的領域の本ですが)。
 といったところでしょうか。
 やや情報が遅いかもしれませんがお許しを。

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今年の本

▼いつものことではあるが、気づいたらもう年末…というのが率直な今年の印象である。時間が経つのがはやくて困るなぁ…などと、これから死ぬまで同じようなことを言い続けてしまいそうな気もするが、以下、今年の総括を兼ねてオススメ本をまとめたい。

新書部門
 
今年の新書らしい書籍という意味では、『科学者という仕事』と『格差社会』が私的には出色。故 米原万里氏の『必笑小咄のテクニック』は、昨年末に出た本ではあるが、大いに笑わせていただいた。米原万里氏の著作は、私的には「必読本」の一つだったが、今後、新刊と出会えないかと思うと残念である。心よりご冥福をお祈りしたい。

一般書部門

 一般書に関しては、金井先生の『働くみんなのモティベーション論』には多いに刺激された。今後、「学ぶみんなのモティべーション論」的な考察を深めていくのを、課題としたいところである(←最近、身の回りでは皆、同じようなことを言っている気が)。

 社会学系では、『変化する社会の不平等』と、『多元化する「能力」と日本社会』のどちらをベストとするか迷うところ。岩波新書新書の『格差社会』と言い、今年は「格差社会」関連の本がまとまって出版された年でもあった気がする。

 経営学関係では、『MBAが会社を滅ぼす』と、『イノベーションの達人』は、両極的とも言える本で、これまたベストを選ぶのが迷うところ。何がイノベーション&持続的な発展につながるのか、という観点では(『イノベーションの達人』つながりでは、深澤直人氏の『デザインの輪郭』も棄てがたい)。

 本年、私にとって象的だった出来事の一つに、原油高があった。世界の「リソース」としての石油をいかに捉えていくか、また、来年以降、アメリカ経済がいかにソフトランディングし、世界秩序がいかに保たれるかも気になるところだ。

 その意味では、『石油の終焉』と『街場のアメリカ論』から得るものが多かった。

  • ポール・ロバーツ 久保恵美子 訳(2006). 石油の終焉. 光文社

科学書部門
 一般書と科学書の境界は微妙なところだが、科学書関係ではサイモン・シンの『ビッグバン宇宙論』(上・下)が格別だった。今年はYS-11の国内引退で、関連書も何冊か読んだが、どれか一つ選ぶなら、やっぱりサイモン・シンかなぁ…。

お仕事関係
 仕事関係ではあるが、最近の仕事と関連性が高い新書としては以下の2冊。

       一般書(専門書と言うほどの専門書ではないが)では、以下の2冊かしら。

       来年は、フィンランドにぜひ行ってみたいな。

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読書メモ:議論のレッスン

▼訳あって、『議論のレッスン』を読み直す。「トゥールミン・モデル」という議論を進めていく上で役に立つモデルが分かりやすく紹介された本である。
 トゥールミン(Toulmin)・モデルでは「主張」(一部の高校生ならば「イイタイコト」という言葉で教わっているかもしれない)に対する「根拠」のみならず、主張と根拠を結ぶ「論拠」(Warrant)と言う概念が提示されているのが特徴である。

 本書で紹介されている例を用いるならば、「彼女はどうしてミーティングに来られなかったのか?」という問いに対して、「風邪」と答えたならば、「風邪」が根拠となりうる(p.69)。しかし、なぜ風邪が根拠になりうるのかは明らかではない.。

 彼女はミーティングに来ることができない(という主張=結論)と、風邪であるという根拠=理由の橋渡しをするのが「論拠」ということになる。例えば、著者が挙げている例としては、(1)人間は健康であるほうがよい。(2)病気は治すべきである。(3)病気は安静にしておいたほうが治りやすい。(4)安静にするとは体を必要以上に動かさないこと、などがある(p.75)。これはすべて暗黙の「仮定」と言える。

 著者の言葉を借りるならば、「主張が成立するにはなんらかの事実が必要であること、しかしその事実を単独で提示しても議論としては不十分である」(p.77)ということになる。日常的場面では「風邪」で、おおよその理由を察することはできるが、理由をさらにさかのぼって説明する「説明」が必要ということなのであろう。

 著者曰く、
「根拠」を出すことは「あなたの主張にはなに(what)か具体的な証拠はありますか?」という質問に対する答えを出すことと同じ(略)

「論拠」を出すことは「あなたが提示した根拠がどうして(how)あなたの主張と関連づけられるのですか?」という質問に対して答えることと同じ
 ということになる。繰り返せば、主張と根拠をつなぐ(橋渡しをする)役割を果たすのが「論拠」である。言われれば「そりゃそうだよな」と思わされるような概念だが、「根拠」のみならず「論拠」にも目を向けられるようになると、より本格的な議論が成立しやすいかもしれない(しかし、主張と根拠、論拠が明確に示されていても、その主張自体に意義がない場合は、救いようがないのであるが)。

▼もう一つ、興味深いのは以下の指摘である。
(1) 議論をする際に論拠についてはそれを支持する裏づけ(Backing)を明記すること。
(2)論拠の確かさの程度を示す限定語(Qualifer)をつけること。
(3)論拠の効力に関する保留条件としての反証(rebutta)を提示すること(p.112)。
 概念だけでは分かりにくいが、本書で図式化示されている説明が役に立つと思われる(引用では図ではなく箇条書きに変形している。トゥールミン・モデルも含めて図式化されたモデルを把握したい場合は、本書を手にとって欲しい)。基本は「ハリーはバミューダで生まれた。だから、多分、彼は英国人であろう」という文章である(p.113)。
  • 主張(Claim) 彼は英国人であろう
  • 根拠(Data) ハリーはバミューダで生まれた
  • 限定語(Qualifier) だから、多分
  • 論拠(Warrant) なぜなら、バミューダで生まれた人は英国人になるから。
  • 裏づけ(Backing) 英国領で生まれた人の国籍に関する法律によってそのように定められているから。
  • 反証(rebuttal) 彼の両親がともに外国人であったり、彼自身がアメリカに帰化したのでない限りは。
 主張、根拠、論拠、限定語、裏づけ、反証などといった概念を、必要に応じて検討することができれば、クリティカルシンキングとしても応用可能であろう。

▼個人的には、本書で用いられている事例(会話や引用文)があまり好みではないのだが、それを差し引いても、本書は議論の作法について述べた本としても、あるいはクリティカルシンキングや、テクニカルライティング(アカデミックライティング)のテキストとして意義がある。分量も多すぎず、少なすぎず適切なのが良い。

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読書メモ(断片):新小論文ノート

▼この時期、毎年買っている本の一つに、代々木ゼミナールが出している『新小論文ノート』という大学受験向け参考書(資料集)がある。

 何度か本日記で触れたことがあったかもしれないが、年度版で、毎年、最新の小論文問題を紹介してくれる、実にありがたい本である。毎年、よくこの値段で出せるよな…と思うくらい分量も充実。解答解説も、詳しい。
▼なぜ、私が大学受験向けの小論文対策本を購入しているかというと…、おそらく以下の3つくらいの理由が挙げられるような気がする。
  • 自分の視野を狭めないため(ビバ!器用貧乏)
  • 優れた読書ガイドとしての利用
  • 作文・小論文の「書き方」(方法)に対する意識
 以下、それぞれについて若干、自己説明を試みよう。

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読書メモ:機長のマネジメント

▼久々にアクセスログを検討。「クルー・リソース・マネジメント」が、相変わらず(情報不足にもかかわらず)頻繁に検索されているようなので、私なりにまとめてみた。クルー・リソース・マネジメント=CRM。カスタマー・リレーションシップ・マーケティングと同じ略称だが、マーケティングと航空機のCRMでは全く意味が異なる概念である。

▼今回、参考書として使ったのは、
 である。まずは定義から。著者ら曰く、クルー・リソース・マネジメントとは、
 (コックピットにおいて)利用可能なすべてのリソースを、最適な方法で最も有効に活用することにより、クルーのトータルパフォーマンスを高め、より安全で効率的な運航を実現することを目的とする考え方(pp.72-73)
 を指すらしい。一読では分かりにくい気もするが、リソースとは「さまざまな情報資源」のことであり、代表的なものとしては「計器類の指示」「各種のマニュアルや資料」「飛行機自体の発する振動、音や加速などの変化」(p.73)などを意味する。

 飛行機の運航に携わる人間にとって、「クルー・リソース・マネジメント」は、なくてはならない総合的な概念であるらしい。

▼では、どうやったらCRMを身につけることができるのか。CRMのトレーニング(訓練)は、具体的には以下のような内容を含むとのことである。
  • CRMは( )のパフォーマンスを向上させるための包括的なシステムである。
  • CRMは( )全員を対象とする
  • CRMは( )訓練のすべての様式に拡張され得るシステムである。
  • CRMは( )のアティチュードと行動及びその安全性に対する影響に焦点を当てる。
  • CRMは個人が各自の行動を振り返る機会であり、チームワークを如何に向上させるかを個人で決定する機会である。(pp.78-79)
 ( )の部分には「乗員」という言葉が入るが(原文まま)、航空機の「乗員」に限らず、かなり多くの職種に当てはまることが分かるだろう。「クルー・リソース・マネジメント」の「クルー」の部分を自分自身に置き換えると、決して他人事ではない。

 逆に、著者らが挙げているCRM訓練ではないものも参考になるだろう。
  • 一夜で達成し得るような「応急処置」ではない。
  • 二~三の特定のケースや、決められたケースのみを管理するための訓練プログラムではない。
  • 他で進められている訓練活動と独立して行われるシステムではない。
  • { }において、他の者のどのように作業を進めていくかという、特定の筋書きを( )に与えるようなシステムではない。
  • 個人中心形式の訓練ではない。
  • 受動的な授業形式のクラスルームコースではない。
  • { }での行動を指示するための管理的な思考をするものではない。(pp.79)
 先の引用に引き続き( )には「乗員」が入る。また、{ } にはコックピットが入る(原文まま)。これまた、クルー・リソース・マネジメントは航空機のみならず、さまざまな概念に適用できそうな概念であることを再確認させられる説明である。何にせよ「リソース」を「マネジメント」するという発想は、適用範囲が広そうだ。

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すきまのおともだち

▼江國香織さんの『すきまのおともだちたち』を読む。「すきま」という言葉に、ふと、惹かれてしまったので、立ち読み(せこい)ではなく購入してしまった。気分転換には、良い本かもしれない。

▼先日、書棚を整理している時の話。本を置くスペースがひっ迫しているので、江國さんの単行本を、思い切って売却し、文庫を古本屋で購入しようという計画を一瞬思い立った。

 が、しかし捨てられないんだなぁ。これが。私は、小説については将来的に売却することを意識しているので、本に傷を付けないように気をつけているのだが、愛着がわいてくると、なかなかそうもいかないのが難点である。

 ちなみに仕事で使うような本は、ページに折り目を付けるし、すぐに何か書き込むので売却も貸し出しも不能である。本っていうのは、本来そういうものなのかな。

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読書メモ:ファシリテーション入門

▼ファシリテーション本を読む。堀氏の本は2冊目。以下、さくっと要約。
▼ファシリテーションとは
 本書によれば、ファシリテーション(facilitation)とは、「集団による知的相互作用を促進する働き」(p.21)を指す。「集団による問題解決、アイデア創造、合意形成、教育・学習、変革、自己表現・成長など、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きがファシリテーション」(p.21)とのことである。

▼ファシリテーションの種類
 ファシリテーションの応用分野は、6つに分類できるらしい。中野民夫氏の『ワークショップ』の孫引き的紹介になってしまっているが、具体的には以下の通り(p.40)。
  • 問題解決型
  • 合意形成型
  • 教育研修型
  • 体験学習型
  • 自己表現型
  • 自己変革型
 それぞれの要素は、「創造的(意思決定・合意形成・価値創造)」を目指すのか、学習(啓発・理解・体感)を目指すのか。また、「社会的(組織・集団)を対象としたものなのか、「個人的」な対象なのかによって分類が可能である。図にすると分かりやすいが、本紹介では省略。

 上記分類を見るからに「ファシリテーション」によって扱われる領域はかなり広いようだ(確かに、良くも悪くも「教育」の言い換え表現が「ファシリテーション」だと捉えられている嫌いもある)。

▼ファシリテーターに求められる基本的スキル
 ファシリテーションを行う立場にある人は(従来のイメージならば指導者、リーダー)、ファシリテータと呼ばれる。本書によれば、ファシリテーションには4つの基本スキルがあるとのことである(p.52近辺)。
  • (1)場のデザインのスキル-場をつくり、つなげる
  • (2)対人関係のスキル-受け止め、引き出す
  • (3)構造化のスキル-かみ合わせ、整理する
  • (4)合意形成のスキル-まとめて、分かち合う
 本書では上記4観点から、それぞれのスキルのあり方について描かれているのが特徴である(それぞれの解説の密度は高い)。

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お嬢さまことば速修講座

お嬢さまことば速修講座
 報道(文化庁調査)によれば、最近、やう゛ぁいくらいコトバが乱れているらしいので、私も乱れを正すべく、文化庁長官 河合隼雄氏も推薦している(ウソ)『お嬢さまことば速修講座』を読む。監修は加藤ゑみ子 氏。一時、話題になった本だ。

 何ゆえに「お嬢さまことば」に学ぶのか。理由は簡単である。だって、お嬢さまは「やう゛ぁい」とか「びみょー」とか言わなさそうじゃない。逆にいえば、そのような乱れた言葉を使わないのがお嬢さまが、お嬢さまと呼ばれる所以である。

▼オジョウサマコレクト
 で、さくっと一読。「なるほどねー」という感じである。男性から見ても純粋に愉しい本だ(お嬢さまことばを存じている男性というのは、びみょーというよりは、キモイ気もするが、あくまで教養の一貫である。そこら辺、勘違いしないでいただきたい)。

 以前、ポリティカリーコレクト(Politically Correct=PC)と言う、狭義には「差別語」の言い換え表現が話題になった時期があったが(正確には「政治的に正しい」表現を意味する)、本書はいわば、オジョウサマコレクト(OC)表現集とも言えよう。

▼言い換え表現例
 たとえば、「恐れ入ります」を「どうも」の代わりの口癖にする(p.14)。相づちは「そうですか」の代わりに、「そうですの」を利用する(p.36)。「肯定は、オーバーなくらい丁寧に丁寧に」(p.86)しかし、否定は曖昧に(p.88)するのがポイントらしい。

 お嬢さま言葉の王道。「ごきげんよう」についても言及がある。曰く、気軽に元気よく、「さよなら」「こんにちは」の代わりに「ごきげんよう」(p.75)とのことである。私も一時、「ごきげんよう」を多用していた時期があるのだが(メールの末尾に「ごきげんよう」と記していたのだ)、評判が悪かったのですぐに辞めてしまった。

 もちろん上記は一例。さらに具体的な実践例もある。
 たとえば、「曖昧な否定」では、次のような例が紹介されている(p.89)。
違います さようでございますか。
さあ、むずかしいことで、わかりかねます。
不本意な結果になるかもしれません。
わたしはそうは思いません さようでございましょうか。
ユニークなご意見ですこと。
そういうお考えもございますのね。
 巻末には、「お嬢さまことば小辞典」なる付録も付いている。「耳障りなことばの言い換えリスト」には、以下のような例も紹介されている(p.128)。
頑張ります 全力を尽くします
ベストを尽くさせていただきます
頑張ってね しっかりね
ご成功(ご健闘)をお祈りいたしますわ
面倒くさいので 時間がとれませんので
手がかけられませんので
だめ よろしくない
なさらないほうがよろしいわ
苦手ですの
わたくしにはむずかしいわ
 ふーん、といった感じだが、確かに「使える」表現だわな。

 人に「頑張ります」と言われると、ややもすると安っぽく聞こえるが、「全力を尽くします」と言われると、まだ許せたりするかもしれない。耳にする頻度の問題だとは思うが、ちょっとした工夫で印象が変わる気もする。

 この手の言葉をしっておけば、言葉も返しやすい。「わたくしにはむずかしいわ」に対しては、「ご健闘をお祈りいたしますわ」と返答すれば良いわけだしな。


▼まとめ
 以上、部分的に紹介をしてきたが、本書は、お嬢さまことばに限らず、日常生活で間違いなく活かせそうな内容と言えよう。もっとも、私のように斜に構えた人間にとっては、それは単なる「ネタ」にしか過ぎないのではあるが。何にせよ自身の「言葉」に意識的であるのは悪くない試みだとは思う今日この頃。

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