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読書メモ(断片):『ラーニング・アロン 通信教育のメディア学』(eラーニング、ベネッセ、Z会…)

▼『ラーニング・アロン 通信教育のメディア学』を読む。専門書(価格は3400円税別)に近い位置づけのせいか、一般受けしなさlそうなタイトルかもしれない。しかし、、eラーニング全般や通信教育(具体的企業名で言えばベネッセやZ会)に関心がある人にとっては、「必読本」と言ってよい本ではないかと思う。個人的には、年間の読書ベスト5に確実に入る良書で、私自身、大変ためになった。
▼『ラーニング・アロン』というタイトルや著者名を見て、ピンとくる本日記の読者の方には解説は不要だと思うが、「アロン」(孤独)はロバート・パットナムの名著『ボーリング・アロン』(邦題『孤独なボウリング』)に由来する用語である。本書の「はじめに」から本書の概説について引用させていただくと、以下の通り。
 各執筆者は歴史学、メディア学、教育学、社会学、社会心理学、広告学、宗教学など専門を異にするが、通信教育というテーマをめぐって二年間の慎重な議論を続けてきた。各章の内容は、講義録の明治からeラーニングの平成まで、宗教教育から技能資格まで、あるいは受験競争からゆとり学習まで広範な領域に及んでいる。共同研究のはじまりについては、「あとがき」でふれるが、各執筆者は次の一点については関心を等しく共有していた。つまり、通信教育という「孤独な学習」(Learning Alone)が社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)(人と人とのつながりが生み出す一般的信頼性・関係積極性)にどのような影響を及ぼすのか、という問いである。それは本署のタイトル『ラーニング・アロン』が示すように、ロバート・パットナム『ボーリング・アロン』(邦題『孤独なボウリング』柴内康文訳、柏書房、二〇〇六年)に由来する問題系である。
 『ボーリング・アロン』では膨大なデータと絶妙な事例から、パーソナル・メディアが普及した一九七〇年代以降アメリカ社会がどれほど「つながりに乏しい社会」となったが見事にに描き出されている。こうした社会的信頼や市民社会の衰退が問題なのは、それが社会全体の経済的停滞…(略)、に深刻な影響を及ぼしているからである。(pp.9-10. 下線部は引用者による)
  現代社会における個人の「孤独」と、ソーシャル・キャピタル(人と人とのつながりによって得られる成果)との関係は、近年、重要な論点の一つである。本書では明確に描かれている訳ではないが、 通信教育(あるいはeラーニング)に付随する「孤独」と、その対概念ともなる「協調学習」(人と人とのコミュニケーションを通した学習)について考えさせられる問題提起と言えよう。

 ちなみにソーシャル・キャピタルについては、以下の2冊をはじめとして
 『新版 コミュニティソリューション』(金子郁容)や、『哲学する民主主義』(パットナムの前書)などが参考になる。

▼本書の全体はもちろんのこと、上記引用で示された「あとがき」においても重要な指摘がなされている。次のような問題提起は、本書全体を通じて通底する問題意識でありと同時に、極めて意義のある問いだと思う。
(引用者注:共同研究を始めた結果)、ところが始めてみると、意外にもかみ合った議論ができるのである。その理由を考えてみると、思い当たる節が二つある。ひとつは、「メディアが教育をよくする」という命題に対しては全員一致で懐疑的だったことだ(「はじめに」参照)。(略)教育現場のニーズとは関係なく、開発途上の技術や設備が次々と大学に売り込まれ、国から補助金が付く。一八歳人口の減少にともない大学は「冬の時代」を迎え、授業料収入が減少する一方で情報機器関連の設備投資額は増加する。いったんシステムを導入すると維持するための保守費用が発生し、さらに数年毎に最新機種に入れ替えねばならない。誰か、教育機関に対する情報通信技術導入の費用対効果(経済効果と教育効果)を検証してくれないだろうか。(略(pp.318)
 私も当該の件に関する関係者の一人で、常に自問自答しながら(費用対効果を考えながら)、事業を進めている。しかし、なかなか思うような成果が出せず、なかなか悩める日々が続いているのが実情である。

 本書を手に取ったからと言って悩みが解決する訳ではないが、私にとっては自分自身の仕事について見直す非常に良い契機となった。

 というわけでお勧めです。
追伸
 読後のファーストインプレッションに過ぎないが、とりあえずの読書メモ。私の専門分野的観点からすると、若干、定義次第で事実誤認があるような気もしないでもないが(例:定義次第だが、実質的に全課程をインターネットで履修可能にした大学は2003年に開設した他大学ではないか?)、資料的価値も高い。

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