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読書メモ(断片):『知識デザイン企業』(紺野 登)

▼紺野先生の『知識デザイン企業』を読む。組織論の多種多様な知見に基づきつつ、「知識デザイン」というコンセプトを示した本。野心的な試みで学ぶところは多かったが、一方で、コンセプトとしては荒削りな面も目立つような印象を受けてしまった。

 「デザイン(あるいは知識デザイン)」の重要性を示しつつ、一方で「アート(あるいはアート・カンパニー)」という概念を同時に提唱している点が、本書の魅力であり、同時に誤読(あるいは混乱)を誘発する要因になっているのではないかと思う。 ▼著者によれば、アート・カンパニーの定義は以下の通り。

 そもそもアート(art)とは、どのような意味を持った言葉なのだろうか。本書でいう「アート・カンパニー」のアートは芸術や芸術作品ではなく、創造的スキルや、アイデアを何らかのプロダクト(人工物)にする器量のことである。本書では、このアート・カンパニーという、創造経済の世紀の新しい企業モデルについて考察を加えていくが、その特徴あるいはこれまでの企業モデルと大きく異なるのは、以下のようなところであると考える。

 1. 器量としてのアート(art)を有する(知識デザイン、デザインを有効に用いる)
 2. 真善美を求め、美において実現する(真摯さと美、倫理企業からアート・カンパニーへ)
 3. 組織として豊かな知を有する(知的集積の質の高い、ダイナミックな知識資産を有する:自在なつながり、即興力、指揮者がいなくてもエコシステムとして価値を生み出す)
(pp.51)

 一言で乱暴に要約すれば、硬直化しがちな既存組織とは異なる企業が、「アート・カンパニー」ということになるのだろうか。著者によれば、このような「アート・カンパニー」においては、創造性の源泉として「知識デザイン」という方法論が存在する。



▼引き著者の言葉を続き借りれば、次のように定義できる。

 そして、このようなアート・カンパニーにおいて行使される創造的な方法論を、「知識デザイン(knowledge design)」と呼ぶこととする。「知識デザイン」は、従来の狭義のデザインとは違う。これまでのデザインとの関わり方、デザインの仕方を転換(転回)し、デザインを組織の知として活用することが、すなわち知識デザインである。その方法論としての詳細は第4章で議論するが、ここでは以下の3つの特性を挙げておこう。

 (1) 先行的構想力(先見力)
 (2) プロダクトに多様な要素(コンポーネント、ソフト、サービス、システム、ブランド)を綜合する(系勢力)
 (3) 創造言語(礼としてのパタン・ランゲージ、経験と内省の綜合)(革新力)
(pp.51-52)

 引き続き一言で乱暴に要約すれば、「知識デザイン」とは、狭義の「デザイン」の概念とは異なり、デザインを組織的に用いる点に特徴があるということになりそうだ。知識が創造される過程(広義のイノベーションの過程)においては、「知識デザイン」が行われており、本書ではその方法論が示されているとも理解できそうだ。

▼うーむ。分かるが、まだ腑に落ちないなぁというのが本音。もしかしたら、事例が偏っているせいかもしれない。

 本書で取り上げられている事例は、AppleのiPodが代表格(他にも取り上げられているが、繰り返し出てくるのはiPodのみ)。Appleは「アート・カンパニー」だとは思うが、iPod(あるいはiTunes)の展開を、知識創造やイノベーションの観点から理解するか、ジョブスという個性で理解するか、デザインという観点から理解するか、それぞれ見解は異なってくるような貴がしないでもない。

 繰り返しになるが、これらを総合的に捉えたという点が、本書の長所であり短所ということになるのだろう。「知識デザイン」という概念には魅力を感じているので、引き続き次作にも期待したい。

▼本書でも紹介されているが、私的には、デザインとイノベーションの原点と言えば以下の2冊かしらん。

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