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読書メモ(断片):ヒルティ『幸福論』

▼仕事に疲れたので、ヒルティの『幸福論』を読む。

 本書に手を伸ばす瞬間、「幸福論」を読もうとする行為それ自体の不幸せさを感じずにはいられない。しかし、こんな時は、次のように考えよう。

 「もしかして不幸…?」などと自問できること。それ自体が幸福の証であると。

 こういう発想をすること自体が不幸じゃない!というツッコミは禁止である。

▼ヒルティの『幸福論』の一番最初の項は、「仕事の上手の仕方」で始まっている。あまり知られていないようなので、引用しておく(以下すべて岩波文庫版)。

 日○ビジ○ス アソ○エの類とは、格が違うのは言うまでもない。
 仕事の上手な仕方は、あらゆる技術のなかでももっとも大切な技術である。というのは、この技術を一度正しく会得すれば、その他の一切の智的活動がきわめて容易になるからである。それなのに、正しい仕事の仕方を心得た人は、比較的に少ないものだ。(p.13)
 本文にも現れているように、ヒルティの文章の特徴は、「仕方」や「技術」、あるいは「こつ」に力点を置いている点にある。続く文章の中で、ヒルティは仕事には「こつ」があると述べ、仕事の「こつ」を6つの要点にまとめている。

 まず「こつ」の重要性について。ヒルティは次のように述べる。
仕事にも、あらゆる技術と同じく、そのこつがあり、それをのみこめば、仕事はずっと楽になる。仕事をする気になることだけでなく、仕事が出来るということも、決して簡単なことではないが、多くの人はそれを知らない。(pp.21-22)(下線部は、オリジナルでは傍点)
 以下、6つの要素について、要点を整理してみよう。
  • (一)障害にうちかつための第一歩は、その障害を知ることである。(p.22)
  • (二)怠惰をおさえて仕事に向かわせるもっとも効果的な手段として役立つのは、習慣の大きな力である。(p.23)
  • (三)精神的な創造的な仕事をするのに、仕事の区分や、あるいはそれ以上に序論のために、時間と仕事の興味とを失っている人がきわめて多い。(略)序論や表題は最後に作れというのが、誰にでもあてはまる適当な忠告である。(略)序論的なものはすべて後廻しにして、自分の実際に最もよく知っている本論から始めれば、ずっと楽に仕事を始めることができる。(p.25)
  • (四)よく働くには、元気と感興とがなくなったら、それ以上しいて働き続けないことが大切である。(p.27)
  • (五)その反対に、多く働くためには、力を節約しなければならない。(略)多く仕事をしようとする人は、精神的雑用を、なお言い添えてよいなら肉体的雑用をも、注意して避けなければならない。そして真にやるべき仕事のために、精力を充分たくわえておくべきである。(p.27-28)
  • (六)最後に、精神的な仕事(われわれは常に第一にこれを念頭においてきた)を容易する最も有効な、とっておきの方法が一つある。それは繰り返すこと、言い換えれば、いくどもやり直すことである。精神的な仕事はほとんどすべてが、最初はただその輪郭がつかめるだけであり、二度目に手がけて初めてその細部が見えてきて、これに対する理解も一層明白になり、精密になるのが常である。(pp.28)
 なるほど。しごく全うなご意見である。

 逆説的に考えれば、(1) 目の前の障害があっても、見て見ぬふりをする。(2)習慣ではなく惰性で動く。(3)仕事の形式や体面を保つことに力を注ぐ。(4)仕事に感興を求めない。(5)雑用第一。(6)左のコップの水を右に注ぐ的な、非生産的な繰り返し。以上の行為を実践すれば、確実に人は不幸になれる、ということである。たぶん。

 こうやってくだらないことを考えている時間が、私にとってのいちばんの幸せ。
 だったら嫌だな。

▼今後の検討課題
 幸福論における「不幸」の扱いと、不幸論の類における「幸福」の扱いについて。

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