読書メモ(断片):喪失と獲得
▼ちょっと前に購入した本だが、改めて読み直してみる。進化心理学領域の本。
要約すれば
、人の何らかの能力の「獲得」には、「喪失」が先んじている、らしい。つまり、ある能力が失わることで、それを「補償」する動機(インセンティブ)が与えられ、新しい適応戦略を生み出し、結果として、その喪失(損失)埋め合わせようとすると言う。
この考え方は、心理学的には、ブリッジズの「トランジション」の考え方にも通じそうだ。ブリッジズによれば、何かしらの転機や変化は、終焉→中立→開始というプロセスを経る。始まる前には必ず終焉があり、その過程で何かしらの喪失感を味わう。
このような考え方は私的にも、納得がいくし、モデルとしても優れていると思われる。
たぶん、私が常々「制約」という言葉を口にしたり、一見ネガティブな事を言い続けるのも、、自分自身や自分を取り巻く制約(私や私が所属する組織が他よりも劣っている点、あるいは私が持っていない能力)に目を向けることで、始めて、それを「克服」したり「解決」しようとする動機付けにつながる、と信じているからである、と思う。
分かりやすく言えば、「できない」からこそ「できるようになりたい」と人は願うものだ。
▼進化心理学的な知見と、ブリッジズが言うような「トランジション」のサイクルを重視するのであれば、「喪失」に対してとりあえずバンソウコウを張るような、「一時点の解決」ではなく、中長期的な解決を模索しなければならないはずである。もちろん、そのためには自分のポジショニングを明確にし(喪失感を喪失している可能性だってある訳で)、失われた「何か」を取り戻す「以上」のことをしなければならない。
進化心理学から学ぶことは多いが、本書もまた得ることが多い仮説に満ちた本。
- ニコラス ハンフリー (著), 垂水 雄二 (翻訳)(2004).喪失と獲得―進化心理学から見た心と体.紀伊國屋書店
要約すれば
、人の何らかの能力の「獲得」には、「喪失」が先んじている、らしい。つまり、ある能力が失わることで、それを「補償」する動機(インセンティブ)が与えられ、新しい適応戦略を生み出し、結果として、その喪失(損失)埋め合わせようとすると言う。この考え方は、心理学的には、ブリッジズの「トランジション」の考え方にも通じそうだ。ブリッジズによれば、何かしらの転機や変化は、終焉→中立→開始というプロセスを経る。始まる前には必ず終焉があり、その過程で何かしらの喪失感を味わう。
このような考え方は私的にも、納得がいくし、モデルとしても優れていると思われる。
- ウィリアム ブリッジズ・倉光 修・小林 哲郎 翻訳(1994).トランジション―人生の転機.創元社
- 金井壽宏 (2002).働くひとのためのキャリア・デザイン.PHP研究所
・突然変異-遺伝的事故-が、生き残り問題を解決するためにそれまでに進化していた手段の一部を奪いさることによって、ある個体を適応度の減少に向けて脅かす。この証拠として、具体的に示されているのは「体毛の喪失と発火技術の出現」と、「記憶能力の喪失と抽象的思考の出現」の2つである。体毛と火の関係については、何となく想像ができそうな事柄なので、記憶力と抽象的思考について見てみよう。
・そのため、その個体は、何らかの新しい行動戦略によってそれを補償する動機が与えられる。
・この新しい戦略は、結果的に、適応度における潜在的損失を埋め合わせる以上のことをし、その個体を他個体よりも優位に立たせる。(p.178)
(略)現に起こったのは、記憶力の喪失が私たちを解放したということである。私たちの祖先のうちで不幸にも(しかし幸運にも)突然の記憶力の低下に悩まされた人々は、それを埋め合わせる何らかの方法を発見しなければならなかった。そして幸いな結果は、彼らが思いもかけない一連の利益を受けとっていたということである。その利益は、世界についてのまったく新しい思考法に由来するものである。もはや、世界を、互いに特定の関係を結んだ無数の特定の事物からなるものとして描くことはできず、世界を規則と法則によって関係づけられたカテゴリーという観点から理解しはじめなければならなかった。そして、そうすることによって、彼らは、環境を予測し、制御する新たな力を獲得したのに違いない。(p.191)現代人より古代人の方が記憶力が良いというのは様々な文献で示される仮説だが、記憶力を失った結果として抽象的思考が発達したというのは魅力的な考えである。
たぶん、私が常々「制約」という言葉を口にしたり、一見ネガティブな事を言い続けるのも、、自分自身や自分を取り巻く制約(私や私が所属する組織が他よりも劣っている点、あるいは私が持っていない能力)に目を向けることで、始めて、それを「克服」したり「解決」しようとする動機付けにつながる、と信じているからである、と思う。
分かりやすく言えば、「できない」からこそ「できるようになりたい」と人は願うものだ。
▼進化心理学的な知見と、ブリッジズが言うような「トランジション」のサイクルを重視するのであれば、「喪失」に対してとりあえずバンソウコウを張るような、「一時点の解決」ではなく、中長期的な解決を模索しなければならないはずである。もちろん、そのためには自分のポジショニングを明確にし(喪失感を喪失している可能性だってある訳で)、失われた「何か」を取り戻す「以上」のことをしなければならない。
進化心理学から学ぶことは多いが、本書もまた得ることが多い仮説に満ちた本。
| 固定リンク
|
「読書メモ」カテゴリの記事
- 読書メモ(断片):QWERTYのナゾ(進化するネットワーキング)(2006.11.28)
- 読書メモ(断片):『情報学的転回』(西垣通)(2007.01.31)
- 読書メモ(断片):『メディア・リテラシー教育 学びと現代文化』(2007.02.08)
- 読書メモ(断片):『ロボット絶望工場』(鎌田慧)(2007.01.11)
- 読書メモ(断片):『ニコマコス流恋愛コミュニケーション』(大平健)(2007.01.15)
「読書メモ(断片)」カテゴリの記事
- アイデアノート(実験)(2010.06.11)
- チームワークをいかに築くか?(『チームマネジメント』『チームワークの心理学』)(2009.12.01)
- 読書メモ(断片):石井淳蔵『ビジネス・インサイト』(2009.12.13)
- 読書メモ(ミニ):『Head First Statistics 頭とからだで覚える統計の基本』(2009.09.25)
- 読書メモ(ミニ):支援とは何か?(『人を助けるとはどういうことか』『プロセス・コンサルテーション』(2009.08.19)

コメント