HEROと憲法
▼憲法記念日である。最近、日経ばかり読んでいたが、久々に目を通した朝日新聞に興味深い記事が書いてあった。憲法記念日にドラマ『HERO
』を見よ、とある。
憲法学者の田村理
氏の説である。
(『踊る大捜査線
』もそうだが、私はアンチ権力の筋に魅力を感じるのだろう)。
憲法学者の田村理
「キムタク好きですか?『HERO』見ましたか?」。必ず憲法の講義で問いかける。この夏、復活するというこのドラマのヒーローは、僕の講義では「権力を持つ者はすべてそれを濫用する傾向がある」と喝破したモンテスキューより重要である。(略)『HERO』をご覧になった方はすぐに思い出すことができるかもしれないが、第10話を引用しながら論が進められている。田村氏による要約は次の通り。「木村拓哉さん演じる検事久利生公平は、女性ニュースキャスターへの暴行を警察で自白した被疑者を証拠不十分で不起訴にする。しかし再び彼女が襲われる。被害者も刑事も犯人は別人だと気づきながら、被疑者を追いつめ、自殺させる。納得できない久利生検事は、キャスターから犯人は別人だとの証言をとり、刑事に詰め寄る。そして言う。」
俺達みたいな仕事ってな、人の命を奪おうと思ったら簡単に奪えんだよ。あんたら警察も、俺ら検察も、そしてもマスコミも、これっぽちの保身の気持ちでな、ちょっと気を緩めただけで人を簡単に殺せんだよ。俺らはそういうことを忘れちゃいけないんじゃないすか!そうそう。そんな話だった。確かに、私も印象に残っていた話だ。
(『踊る大捜査線
▼氏曰く、この「けっしてこぼさぬ涙をたたえた木村さんの強い怒りの『目』は立憲主義の象徴」らしい。この「立憲主義」が本題である。
「簡単に人を殺せる」ほどの力=公権力に制限を課して濫用を防ぎ、国民の人権をまもる、その手段として憲法を定める。「立憲主義」は言葉としては理解していたが、そういう意味だったんだな…(無知)。
後に氏が示す憲法観についての話題は腑に落ちる。
憲法は公権力にしてもらっては困ることを定める法である。だが僕達はそのことをうまく理解できない。多くの人にとって憲法は、生存権保証のように国=公権力がしてくれることを定めた法である。国は人権を与えてくれ、僕達を護(まも)ってくれる頼もしい「正義の味方」だと感じているのである。憲法の価値を護ろうとするなら、条文を「改めない」ことよりも、僕達のこの権力観を「改める」ことが必要である。権力観を「改める」必要がある、という指摘は極めて重要だろう。
(略)
だから、公権力の不正を絶対に許さぬ「目」、「けっしてこぼさぬ涙をたたえた強い怒りの目」を支配される側にいる僕達の中に育てなければならない。そのためにまずするべきことは、「公権力の怖さ」の具体的なイメージを感じとることである。(略)(下線はオリジナルでは点線強調)
加えるならば、権力の側にいるかいないか、また、支配される側にいるかいないかは別として、人は気づかぬうちに「不正」を犯しかねない存在であるということにも自覚的でありたいものだ(別に性悪説の立場に立っている訳ではないが、不正を犯そうと思って犯さなくても、結果として、それが不正につながっている場合もあろう)。
▼護憲派でも改憲派でも、そもそも護ろう(あるいは改めよう)とする憲法に対して、どのようなイメージ(憲法観)を持っているのか、その前提も問われるべきなのかもしれない。憲法を鏡として、自らを省みるのも悪くなさそうだ。
さて、私も久々に『HERO』でも見直すとするか。
以上、引用は朝日新聞2006年5月3日朝刊より。
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