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昨年度、私の授業を受講していた皆さんへ

▼大分にやってきて一週間以上が経ちました。まだ、ほとんどの皆さんにご挨拶ができていません。相変わらず怠慢な私ですが、予想以上に、気にされている方がおられるようなので、以下、主に昨年度、私が直接的に関わってきた(皆さんに選択権があるわけではないので「関わらざるを得なかった」かな)皆さんにお伝えします。

 なぜ大分へ行くことになったのか。

 この質問は、これから先もしばらく聞かれると思います。私は、過去にも比較的移動が多い人間だったので(東京生まれで、宮城県=仙台育ち、大学は神奈川=藤沢で、大学院は石川=金沢近辺、その後、埼玉=所沢から広島へ…というのは私の自己紹介の十八番でした)、移動する度ごとによく聞かれていました。

 表層的に答えれば、私は、土地に対するこだわりがあまりないとか(一極集中を好まず、地方でマイペースに生活する方が私の性に合っています)、面白そうなこと、自分がワクワクできることがあれば、たぶん、私は住む場所も仕事を選ばないのだと思います。あるいは、自分がこれまで学んできたことを新しい土地で試すことができるのか、確認したい、という気持ちもどこかであるのかもしれません。

 上記の回答で、通常の日常会話は済んでしまうのですが、質問の本意はそれだけではないですよね。何かを選択するということは何かを捨てる、ということも意味します。変化には、必ずと言って良いほど喪失を伴います。恋愛関係に置き換えれば、「なぜ彼(彼女)なの」という問いよりも、「なぜ私じゃないの」という問いの方が場合によっては、悩みとしてはより深いと思います(おっと、話がズレますね)。

▼私なんかは、ご存じのように「迷い」のかたまりのような人間ですから、このような時に、迷わない訳がありません。しかも、組織に属している限り(誰でも何かしら、社会集団に属しています)、一人の問題は組織全体にも何らかの影響を及ぼします。実際、関係各位に迷惑をかけているわけですし、申し訳なく思っています。今、この時期に転職をするということが何を意味するのかも極めて難しい問題です。

 例えば、私にとっても予想しえない影響があるかもしれません。自己中心的な話題で恐縮ですが、例えば、私に対する一般的な信頼(性)が低下するかもしれません。人によっては、あそこ(所属大学名、大学院名)の出身の人は「すぐに辞める」などと風評を立てられるかもしれません。他にもいろんな噂話が出るかもしれません。

 しかし同時に、組織にとって個人というのは、「歯車」の一つに過ぎないという見方も可能です。この問題は、一言では語りきれない難しい問題ですが、今の世の中は、良くも悪くも「代替可能」あるいは「交換可能」にできている面があります。大きな目で見れば、誰かは誰かの「代わり」になってしまうのです(例えば、アルバイトの仕事でも、一人一人の人間関係で見れば、AさんはBさんの代わりにはなりませんが、大きな目で見れば、誰もが「同じような」仕事をしなければ全体はうまくまわりません)。

 私も、こんな文章を書いていますが、既に忘却の彼方の存在かもしれません。
 今はそうでなくても、いずれ記憶は薄らいでいくかもしれません。
 
 もしかしたら、人はどこかで、「かけがえのなさ」と「代替(交換)可能性」と、闘わなくてはならないのかもしれませんね。事実、私も、皆さんとの出会いが、心の支えとなっていますが、同時に、代替(交換)可能性におびえざるを得ない面がどこかにありました。皆さんは偶然にも、この対立的関係について考える機会を得た、と考えると少しは今回の件の捉え方も変わってくるかもしれません。

▼過去に、金井壽宏先生のキャリア論を紹介した時に(覚えていないかもしれませんが)、「偶然性(不確実性)」の重要性や、「変化」にまつわる心理的変化について論じたことがありました。偶然性や変化をどう捉え、受容し、対峙するか。これは私にとっても、大きな課題であり、謎であり、「問い」です。皆さんも、この「問い」をどこかに抱きながらキャリアを歩んでもらいたいと思っています。
 「無責任」と言い放つのは易しいかもしれません。しかし、もし、その説明で納得するならば、私が教えられることは(学べることは)始めから何もなかったと思います。

 ぜひ、未来に向けて毎日を着実に歩んでいきましょう。
 私も、そうありたいと願っています。

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