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読書メモ(断片):『夜と霧』とクリスマス

▼毎年書いていることだが、この時期、私はフランクルの『夜と霧』を読み返す癖がある。大晦日だよドラえもんと同じくらい、私にとっては定番なのである(例が良くないが)。なぜ、この時期なのか。たぶん、本書でクリスマスの例が触れられているからだろう。強制収容所にとっての「クリスマス」の意味をついつい考えてしまうのである。

 言い換えれば、クリスマスには何かいいことがあるだろう、と信じていた人が、その「いいこと」と出会えなかった時の落胆の有りようを思わずにはいられないのである(こう書くと、私は不遇なクリスマスを過ごしてきたように思われるかもしれないが、そんなことはどうだっていいのである。今日も仕事してるしな)

 私としては、クリスマスがクリスマスではないかもしれない、という想像力をどこかで維持しつつ、クリスマスという日を過ごしたい。クリスマスくらい、そういう「不在」の在り方について考えてみる日でありたい。だって、サンタクロースだってサンタクロースがサンタクロースではない(かもしれない)、のだから。
  • フランクル, V.E.. (著) 池田香代子(訳)(2002).夜と霧 新版. みすず書房
 スピノザは『エチカ』のなかでこう言っていなかっただろうか。

 「苦悩という情動は、それについて明晰判明に表象したとたん、苦悩であることをやめる」(『エチカ』第五部「知性の能力あるいは人間の自由について」定理三)

 しかし未来を、自分の未来をもはや信じることができなかった者は、収容所内で破綻した。そういう人は未来とともに精神的なよりどころを失い、精神的に自分を見捨て、身体的にも精神的にも破綻していったのだ。(略)

 この一例の観察とそこから引き出される結論は、わたしたちの強制収容所の医長が折りに触れて言っていたことと符合する。医長によると、この収容所は一九四四年のクリスマスと一九四五年の新年のあいだの週に、かつてないほど大量の死者を出したのだ。これは、医長の見解によると、過酷さを増した労働条件からも、悪化した食糧事情からも、気候の変化からも、あるいは新たにひろまった伝染性の疾患からも説明がつかない。むしろこの大量死の原因は、多くの被収容者が、クリスマスには家に帰れるという、ありきたりの素朴な希望にすがっていたことに求められる、というのだ。クリスマスの季節が近づいても、収容所の新聞はいっこうに元気の出るような記事を載せないので、被収容者たちは一般的な落胆と失望にうちひしがれたのであり、それが抵抗力におよぼす危険な作用が、この時期の大量死となってあらわれたのだ。

 すでに述べたように、強制収容所の人間を精神的に奮い立たせるには、まず未来に目的をもたせなければならなかった。被収容者を対象とした心理療法や精神衛生の治療の試みがしたがうべきは、ニーチェの的を射た格言だろう。

 「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」

 したがって被収容者には、彼らが生きる「なぜ」を、生きる目的を、ことあるごとに意識させ、現在のありようの悲惨な「どのように」に、つまり収容所生活のおぞましさに精神的に耐え、抵抗できるようにしてやらねばならない。(pp.125-126)
▼以下、どうでもいいコメント(蛇足)。

 日本には「もういくつ寝るとお正月♪」というのん気な歌があるが、お正月を「現在の苦しみから解き放される日」と定義しよう。しかし、その「お正月」が、いつやってくるのかは分からない。いつまでもやってこない「お正月」。これは考えるだけでも結構、しんどい。そんな中、ある人たちは、1月1日に「お正月」がやってくると考えていた。しかし、現実には1月1日には何も起こらない。1月1日は「お正月」ではなかったのである。

 さてどうしてみたものか。

 なんだか意味のない仮定をしてしまったが、お正月もまた、お正月ではないかもしれない、という想像力を維持しつつ、過ごしたいものだ。なんてこと言いつつ、クリスマスもお正月も、飲んだくれているんだろうけどな。

▼最後にもう一つ引用(p.145)。
わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。では、この人間とはなにものか。人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ。
 私は、どんな人間なのだろう。そして、あなたは?

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