読書メモ(断片):ケースメソッド
▼高校時代からの友人からトラックバックをいただいた。ありがたいことである(ちなみに現在の私の職業は、おそらくは教育職だろう)。
▼私にとって経営学は「やや興味がある」程度に過ぎないが、MBAから学ぶべきことは多いな、と思う。一応は、私も、Dr. Nonaka が研究科長だった大学院に進んだくらいだから(The
Knowledge-Creating Company が最近のビジネススクールでどう扱われているか気になるところだ)、ケースなどを通して「ウロウロする」ことの意義は分かってきたつもりである(なんちゃって的理解に過ぎないとは思うが)。
しかし、だ。偶然にも立場が変わって、サービスの受け手ではなく、送り手(本来、こうやって単純化できるものではないとは思うが)の立場になってみると、自分が多くを「学んだ」はずの手法は、簡単には「模倣」できないらしいことに気づかされる。ケースメソッドにしてもクラス内の討論にしても、相当に高度な授業スタイルだ。いったい、どうやってHBSはスタッフを育てているのだろうか、と思う。
▼今年度くらいから私も(ようやく)本格的に仕事をするようになって、どんな科目であれ、また、内容は初歩的であれ、ケース的なことを取り入れるし、そうでなくてもちょっとしたロールプレイやプロジェクト、クラス討論もやりたいと思っている。少なくても、一方的な講義は極力避けているつもりだ(話し下手だしな)。
だが、授業の表向きの目的がプレゼンテーション(ソフト?)の習得だったり、情報系の科目だからかもしれないが、内部からも外部からも「さまざまな意見」がやってくる。「例ではなく、正解を教えてくれ」はもちろんのこと、表層的なものになると「こんなこと」(グループ活動等)をせずに資格対策をして欲しいとか、プレゼンテーションソフトのアニメーション機能を教えて欲しいとか、まあ、そういう話である。
単に私の教え方の問題だとは思うのだが(評価が高い場合もある)、この手のメッセージに対峙するのは、意外としんどい。「対称性」を考えれば、授業のやり方を変えることは、学生にとっても教員にとっても「タフネス」が必要ってことかもしれないが(もっとも大学院レベルと学部を一緒にするのは失礼な話だけど)。
▼HBSについては、『ケースメソッド 実践原理―ディスカッション・リーダーシップの本質』を読む限り、優れた教員育成システムが組まれているような印象を受ける。本書はケースメソッド、ケースメソッドの授業法を学ぶという大変に優れた本である(訳書は676ページもある)。いわゆる教員向けの『教授法ハンドブック』よりも、私は面白いと思ってみたりする。
ケースメソッドでは「混乱」が伴う故に、事前の説明が重要ということらしい。
討議形式の授業に対する徹底した肯定としても読める。
▼私は、友人が書いていた「漢方のように効いてくるものだと思う 」という一文が、痛く気に入った。「漢方」とは、これまた腑に落ちるメタファーだ。教員なんて職業も「ほとんど毎日が『わけのわからないこと」だらけ』だったりするが、弱い紐帯というのも「わからなさ」に意味を与えてくれる機会になっているのかもしれない。そういえば、玄田有史氏も、weak ties の重要性について触れていたな。
▼私にとって経営学は「やや興味がある」程度に過ぎないが、MBAから学ぶべきことは多いな、と思う。一応は、私も、Dr. Nonaka が研究科長だった大学院に進んだくらいだから(The
Knowledge-Creating Company が最近のビジネススクールでどう扱われているか気になるところだ)、ケースなどを通して「ウロウロする」ことの意義は分かってきたつもりである(なんちゃって的理解に過ぎないとは思うが)。しかし、だ。偶然にも立場が変わって、サービスの受け手ではなく、送り手(本来、こうやって単純化できるものではないとは思うが)の立場になってみると、自分が多くを「学んだ」はずの手法は、簡単には「模倣」できないらしいことに気づかされる。ケースメソッドにしてもクラス内の討論にしても、相当に高度な授業スタイルだ。いったい、どうやってHBSはスタッフを育てているのだろうか、と思う。
▼今年度くらいから私も(ようやく)本格的に仕事をするようになって、どんな科目であれ、また、内容は初歩的であれ、ケース的なことを取り入れるし、そうでなくてもちょっとしたロールプレイやプロジェクト、クラス討論もやりたいと思っている。少なくても、一方的な講義は極力避けているつもりだ(話し下手だしな)。
だが、授業の表向きの目的がプレゼンテーション(ソフト?)の習得だったり、情報系の科目だからかもしれないが、内部からも外部からも「さまざまな意見」がやってくる。「例ではなく、正解を教えてくれ」はもちろんのこと、表層的なものになると「こんなこと」(グループ活動等)をせずに資格対策をして欲しいとか、プレゼンテーションソフトのアニメーション機能を教えて欲しいとか、まあ、そういう話である。
単に私の教え方の問題だとは思うのだが(評価が高い場合もある)、この手のメッセージに対峙するのは、意外としんどい。「対称性」を考えれば、授業のやり方を変えることは、学生にとっても教員にとっても「タフネス」が必要ってことかもしれないが(もっとも大学院レベルと学部を一緒にするのは失礼な話だけど)。
▼HBSについては、『ケースメソッド 実践原理―ディスカッション・リーダーシップの本質』を読む限り、優れた教員育成システムが組まれているような印象を受ける。本書はケースメソッド、ケースメソッドの授業法を学ぶという大変に優れた本である(訳書は676ページもある)。いわゆる教員向けの『教授法ハンドブック』よりも、私は面白いと思ってみたりする。
- ルイス・B. バーンズ, C.ローランド クリステンセン, アビー・J. ハンセン・髙木 晴夫 (翻訳)(1997). ケースメソッド 実践原理―ディスカッション・リーダーシップの本質質. ダイヤモンド社
- Louis B. Barnes, C. Roland Christensen, and Abby J. Hansen (1994). Teaching and the case method : text, cases, and readings 3rd ed, Boston, Mass. : Harvard Business School Press
- 教訓その1:表明なければ納得なし(p.60)
- 教訓その2:混乱なくして「学び」なし(p.62)
- 教訓その3:励ましなくして発言なし(p.63)
- 教訓その4:対立なくして討論なし(p.67)
- 教訓その5:「文章」によって対立と焦点が生じる(p.68)
ケースメソッドでは「混乱」が伴う故に、事前の説明が重要ということらしい。
あるいは、「表明なければ納得なし」には、こんなことも書かれている。教訓その2:混乱なくして「学び」なし
最初は、提出された各人の考えを「全世界的」に眺める必要があるが、まだこの時点では学生の考えは支離滅裂である。学生はこの混沌とした新地層を興奮と期待を持って歩きまわると同時に、混乱が終息するまで耐え抜き、変化への恐れを取り去らなければならない。この間、彼らは「難しすぎます」「こみ入っていて分かりません」「泥沼です」と言うので、討論授業の教師は前もってこの過程を学生に説明しておく。(p.62)
討議形式の授業に対する徹底した肯定としても読める。
教訓その1:表明なければ納得なし(p.60)事前の若干の説明と、たたみかけるような肯定。こういうのも意義あるんだろうな。
「学び」を得る方法として討論が優れていることについては、研究者のあいだに異論はない。発言によって学生は積極的になる。また、自分が発言して衆目にさらされるか質問されるまで、発言者自身が自分の考えを知らないこともある。だからこそ、発言が次の思考と言葉に力を与える。たとえ質問の形であっても何かを発言すれば、自分の意見を他者と同じように批判できるようになる。ひと言でも発言すれば、話し手自身が考える人、批判する人になる。聴衆が一人でもいれば、発言は、発言者自身と聴衆によって受けとめられ、批判され、深められる。(pp.60-61)
▼私は、友人が書いていた「漢方のように効いてくるものだと思う 」という一文が、痛く気に入った。「漢方」とは、これまた腑に落ちるメタファーだ。教員なんて職業も「ほとんど毎日が『わけのわからないこと」だらけ』だったりするが、弱い紐帯というのも「わからなさ」に意味を与えてくれる機会になっているのかもしれない。そういえば、玄田有史氏も、weak ties の重要性について触れていたな。
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