読書メモ(断片):心理学と教育実践の間で
▼所用で『心理学と教育実践の間で』を再読。本当は、心の理論(読書メモ参照)と、カミロフ=スミスの関係について調べたかったのだが、改めて読み直してみると大変に興味深い。要するに、人間には自分の考え(「理論」)に固執するような段階(=事実の方を無視する)を経て、自分の考えに修正を図れるようになる、らしい。
良くも悪くも「大人」になると、自分の「理論」(あるいは持論)の修正を図れないようになってしまうのが、人間の悲しいところである。ここできわめて重要なことは、六歳から七歳(第二段階)の子どもが、自分の「理論」が破綻している事実を見せつけられても「理論」の修正をしないで、事実の方を無視する(「なんだかわからないこと」として思考の対象外におく)ということである。このような、自らの「理論」の一貫性に固執することは、言語の発達段階でも見られることで、例えば、著者の子どもも言葉を覚えはじめたころ、「いたくない」「おいしくない」などを一般化し、「好きくない」「きれいくない」という言い方に一時固執していた(米国の例では、wentのかわりに、wentedとかgo-edなどと言ったり、feetのかわりに、feetsとかfootsと言ったりする時期があるという)。このような「理論」への固執はのちにそれをより一般性のある「理論」にしてゆくためにはむしろ重要な意味をもっており、認識の発達の「後退」を意味するわけではない。
七歳以上(第三段階)の子どもは、「理論」が当てはまらない事態に至ると、あらためて見方を変えて(別の分析単位、別の活動の流れとして)再びかつての「理論以前」の知覚(身体全体を通したアフォーダンスの抽出)に戻ることができる。そこで新たに再・知覚を行い、それに基づいて「理論」の再構築(再表象)を試みることができるのである。(p.190)
- 佐伯 胖・佐藤 学・宮崎 清孝・石黒 広昭(1998). 心理学と教育実践の間で. 東京大学出版会(佐伯 胖「学習の『転移』から学ぶ」)
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