読書メモ:機長のマネジメント
▼久々にアクセスログを検討。「クルー・リソース・マネジメント」が、相変わらず(情報不足にもかかわらず)頻繁に検索されているようなので、私なりにまとめてみた。クルー・リソース・マネジメント=CRM。カスタマー・リレーションシップ・マーケティングと同じ略称だが、マーケティングと航空機のCRMでは全く意味が異なる概念である。
▼今回、参考書として使ったのは、
飛行機の運航に携わる人間にとって、「クルー・リソース・マネジメント」は、なくてはならない総合的な概念であるらしい。
▼では、どうやったらCRMを身につけることができるのか。CRMのトレーニング(訓練)は、具体的には以下のような内容を含むとのことである。
逆に、著者らが挙げているCRM訓練ではないものも参考になるだろう。
▼今回、参考書として使ったのは、
-
村上 耕一・斎藤 貞雄(1997).
機長のマネジメント―コックピットの安全哲学「クルー・リソース・マネジメント」
産能大学出版部
を指すらしい。一読では分かりにくい気もするが、リソースとは「さまざまな情報資源」のことであり、代表的なものとしては「計器類の指示」「各種のマニュアルや資料」「飛行機自体の発する振動、音や加速などの変化」(p.73)などを意味する。(コックピットにおいて)利用可能なすべてのリソースを、最適な方法で最も有効に活用することにより、クルーのトータルパフォーマンスを高め、より安全で効率的な運航を実現することを目的とする考え方(pp.72-73)
飛行機の運航に携わる人間にとって、「クルー・リソース・マネジメント」は、なくてはならない総合的な概念であるらしい。
▼では、どうやったらCRMを身につけることができるのか。CRMのトレーニング(訓練)は、具体的には以下のような内容を含むとのことである。
( )の部分には「乗員」という言葉が入るが(原文まま)、航空機の「乗員」に限らず、かなり多くの職種に当てはまることが分かるだろう。「クルー・リソース・マネジメント」の「クルー」の部分を自分自身に置き換えると、決して他人事ではない。
- CRMは( )のパフォーマンスを向上させるための包括的なシステムである。
- CRMは( )全員を対象とする
- CRMは( )訓練のすべての様式に拡張され得るシステムである。
- CRMは( )のアティチュードと行動及びその安全性に対する影響に焦点を当てる。
- CRMは個人が各自の行動を振り返る機会であり、チームワークを如何に向上させるかを個人で決定する機会である。(pp.78-79)
逆に、著者らが挙げているCRM訓練ではないものも参考になるだろう。
先の引用に引き続き( )には「乗員」が入る。また、{ } にはコックピットが入る(原文まま)。これまた、クルー・リソース・マネジメントは航空機のみならず、さまざまな概念に適用できそうな概念であることを再確認させられる説明である。何にせよ「リソース」を「マネジメント」するという発想は、適用範囲が広そうだ。
- 一夜で達成し得るような「応急処置」ではない。
- 二~三の特定のケースや、決められたケースのみを管理するための訓練プログラムではない。
- 他で進められている訓練活動と独立して行われるシステムではない。
- { }において、他の者のどのように作業を進めていくかという、特定の筋書きを( )に与えるようなシステムではない。
- 個人中心形式の訓練ではない。
- 受動的な授業形式のクラスルームコースではない。
- { }での行動を指示するための管理的な思考をするものではない。(pp.79)
▼本書において、私的に最も「なるほど」と思わされたのは、「コミュニケーションの阻害要因」についての考察である。曰く、コミュニケーションの阻害要因は「内容」「表現」「その他」の3つに大きくは分類される。
内容:情報量の過多。情報量の過小。事実と憶測の混同。本書では具体的に(すなわち、パイロットの立場で)、上記阻害の具体例が記されており、事例としても学ぶところは大きかった。
表現:不明瞭な言語・用語。不明瞭な発音。過大な速度。不適切な音量、不適切なタイミング。
その他:価値観の差違。思い込み、偏見等。話し手、聞き手の態度。
▼以上、考察よりも単なる引用が多くなってしまったが読書メモまで。
航空機関連の本は「失敗学」の観点から数冊目を通してきたが(人が、高度なテクノロジーといかに向き合うかを考えるにあたって、コックピットの事例は参考になるのだ)、本書から得るものは大きかった。類書には以下がある。
- 桑野 偕紀・塚原 利夫・前田 荘六(2002). 機長の危機管理―何が生死を分けるか 講談社
- 園山耕司 (2003).航空管制の科学―飛行ラッシュの空をどうコントロールするか.講談社
- 岡地司朗(1999). ジャンボ・ジェットを操縦する―B747-400の離陸から着陸まで. 講談社
- 石崎秀夫 (1997).
機長のかばん―離陸から着陸までのチェックリスト.講談社
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