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読書メモ:議論のレッスン

▼訳あって、『議論のレッスン』を読み直す。「トゥールミン・モデル」という議論を進めていく上で役に立つモデルが分かりやすく紹介された本である。
 トゥールミン(Toulmin)・モデルでは「主張」(一部の高校生ならば「イイタイコト」という言葉で教わっているかもしれない)に対する「根拠」のみならず、主張と根拠を結ぶ「論拠」(Warrant)と言う概念が提示されているのが特徴である。

 本書で紹介されている例を用いるならば、「彼女はどうしてミーティングに来られなかったのか?」という問いに対して、「風邪」と答えたならば、「風邪」が根拠となりうる(p.69)。しかし、なぜ風邪が根拠になりうるのかは明らかではない.。

 彼女はミーティングに来ることができない(という主張=結論)と、風邪であるという根拠=理由の橋渡しをするのが「論拠」ということになる。例えば、著者が挙げている例としては、(1)人間は健康であるほうがよい。(2)病気は治すべきである。(3)病気は安静にしておいたほうが治りやすい。(4)安静にするとは体を必要以上に動かさないこと、などがある(p.75)。これはすべて暗黙の「仮定」と言える。

 著者の言葉を借りるならば、「主張が成立するにはなんらかの事実が必要であること、しかしその事実を単独で提示しても議論としては不十分である」(p.77)ということになる。日常的場面では「風邪」で、おおよその理由を察することはできるが、理由をさらにさかのぼって説明する「説明」が必要ということなのであろう。

 著者曰く、
「根拠」を出すことは「あなたの主張にはなに(what)か具体的な証拠はありますか?」という質問に対する答えを出すことと同じ(略)

「論拠」を出すことは「あなたが提示した根拠がどうして(how)あなたの主張と関連づけられるのですか?」という質問に対して答えることと同じ
 ということになる。繰り返せば、主張と根拠をつなぐ(橋渡しをする)役割を果たすのが「論拠」である。言われれば「そりゃそうだよな」と思わされるような概念だが、「根拠」のみならず「論拠」にも目を向けられるようになると、より本格的な議論が成立しやすいかもしれない(しかし、主張と根拠、論拠が明確に示されていても、その主張自体に意義がない場合は、救いようがないのであるが)。

▼もう一つ、興味深いのは以下の指摘である。
(1) 議論をする際に論拠についてはそれを支持する裏づけ(Backing)を明記すること。
(2)論拠の確かさの程度を示す限定語(Qualifer)をつけること。
(3)論拠の効力に関する保留条件としての反証(rebutta)を提示すること(p.112)。
 概念だけでは分かりにくいが、本書で図式化示されている説明が役に立つと思われる(引用では図ではなく箇条書きに変形している。トゥールミン・モデルも含めて図式化されたモデルを把握したい場合は、本書を手にとって欲しい)。基本は「ハリーはバミューダで生まれた。だから、多分、彼は英国人であろう」という文章である(p.113)。
  • 主張(Claim) 彼は英国人であろう
  • 根拠(Data) ハリーはバミューダで生まれた
  • 限定語(Qualifier) だから、多分
  • 論拠(Warrant) なぜなら、バミューダで生まれた人は英国人になるから。
  • 裏づけ(Backing) 英国領で生まれた人の国籍に関する法律によってそのように定められているから。
  • 反証(rebuttal) 彼の両親がともに外国人であったり、彼自身がアメリカに帰化したのでない限りは。
 主張、根拠、論拠、限定語、裏づけ、反証などといった概念を、必要に応じて検討することができれば、クリティカルシンキングとしても応用可能であろう。

▼個人的には、本書で用いられている事例(会話や引用文)があまり好みではないのだが、それを差し引いても、本書は議論の作法について述べた本としても、あるいはクリティカルシンキングや、テクニカルライティング(アカデミックライティング)のテキストとして意義がある。分量も多すぎず、少なすぎず適切なのが良い。

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