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光はいずこからも来る-Light from Anywhere

▼吉見俊哉氏の『万博幻想-戦後政治の呪縛』の一部を読み直す。
 万博というのは「理念」がどんなに崇高であっても、それが「かたち」になる時には、「理念」と実際のかたちが乖離しまいがちになるものらしい。

 吉見氏の著書からの孫引きになってしまうが、大阪万博の時には、以下のような崇高な理念が提出されていたとのことだ。桑原武夫氏による名文を引用したい。
 世界の現状をみるとき、人類はその栄光ある歴史にもかかわらず、多くの不調和になやんでいることを率直にみとめざるをえない。技術文明の高度の発展によって、現代の人類は、その生活全般にわたって根本的な変革を経験しつつあるが、そこに生じる多くの問題は、なお解決されていない。さらに世界の各地域には大きな不均等が存在し、また、地域間の交流は、物質的にも精神的にも、いちじるしく不十分であるばかりか、しばしば理解と寛容を失って、摩擦と緊張が発生している。科学と技術さえも、その適用を誤るならば、たちまちにして人類そのものを破壊にみちびく可能性を持つにいたったのである。

 このような今日の世界の直視しながらも、なお私たちは人類の未来の繁栄をひらきうる知恵の存在を信じる。しかも私たちはその知恵の光が地球上の一地域に局限されて存在するものではなく、人間あるところすべての場所に、あまねく輝いているものであることを信じるものである。この多様な人類の知恵が、もし有効に交流し刺激しあうならば、そこに高次の知恵が生れ、この多様な人類の知恵が、もし有効に交流し刺激しあうならば、そこに高次の知恵が生まれ、異る伝統のあいだの理解と寛容によって、全人類のよりよい生活に向っの調和的発展をもたらすことができるであろう。(『朝日新聞』一九六五年一〇月二一日)(p.052)

(下線は引用者。『万博幻想-戦後政治の呪縛』より)
 吉見氏も指摘しているが、まったくもって「名文」である。

 大阪万博は、私にとっては(注:言うまでもないが、私は大阪万博以降の人間。私にとっての万博は1985年の筑波の科学万博を意味する)、高度成長の象徴であり、真っ先に思い浮かべるのは岡本太郎の「太陽の塔」である。その大阪万博に、上記のような理念があったとは、吉見氏の著作と出会うまで「知りもしなかった」というのが率直な感想である(正確には興味を持っていなかった?)


▼吉見氏によれば、大阪万博の構想で最も重視されていたのは「いかにして今日の人類が直面している『不調和』を乗り越えていく点にあった」ということらしい。「『不調和』の乗り越える鍵が『人類の知恵』にあるとの認識でも、テーマ委員会の論者たちは一致していた。『Light from Anywhere』の内実である」(p.50)とのことだ。

 「Light from Anywhere」とは、1965年とは思えないようなコンセプトである。しかし、実際の大阪万博は…、単なるお祭りだったとしか思えない(もっとも、私は同時代を生きていた訳ではないので、詳細はよく分かっていないが)。

▼現在、愛知県で行われている万博において、当初、提出されていたテーマは「自然の叡智」だったということは、『デザインのデザイン』や、新聞記事などで見聞きはしていた。テーマは結果として巧妙にかわっているが、マスコミ報道を見ている限り、「愛」やら「地球」を名乗るだけの価値があるのか否かは、正直、よく分からない。

 私の目から見ても、筑波の科学万博と何が違うのか、分からないしな…。

▼メディアアートとして興味深い展示もあるようなので、是非とも見に行きたいところではあるが、「理念」がなし崩しになっていったという過程を、一端「知らなかった」ことにして、純粋に会場に向かう、というのは容易ではない気もする。

 もっとも、これはディズニーランドにも言えることなのだろうけれど…。「資本主義」や「政治」が見え隠れしていない世界などどこにもないのだろうが、気になる所だ。

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