▼パリーグの一部のチームが合併するとか、ライブドアと楽天が新球団の設立を申請しているとか、その場所が何と仙台であるとか(注:私の実家。宮城県民=東北人にとってはうれしいニュースである)、最近、野球をめぐるニュースが多い。
私が外部で何らかのお話をさせていただく時、もっとも良く使う喩え話や、雑談はスポーツに関する話題なのだが(その次は恋愛話だったりするが、最近、自主規制をしているという噂もある)、数あるスポーツの中でも野球は頻出中の頻出である。
もっとも、私は別段、野球が好きというわけではないし、特にごひいきのチームがあるわけではない(敢えていえば日ハムか。これも友人の影響が大だが)。なので、たいてい私の話題も表層的なのだが(パリーグがプレイオフ制を導入したのも最近知った程である)、今回のごたごたにおいて古田の活躍は特筆すべきかな、と思っている
▼詳しいことは私は分からないのだけれど、捕手というのは野球の選手の中でも、もっとも「チームワーク」の重要性を感じさせるポジションではないか、と思う。関連する話題では小泉信三氏が、エッセイ集『
練習は不可能を可能にす』で書いていたことが印象に残っている。味わいある文章なので、そのまま引用してみよう。
「チームワーク」について
私はよくスポーツの試合を見てあるくがチームワークということについて、その人間社会の縮図を見ると感じ、今さらながら興味を新たにすることがしばしばである。
やはり一番わかりやすいのは野球であろう。
(略)ここに何万人という大観衆があっても、おそらくそのだれもが見ていない光景がある。それは捕手が一塁援護に駆け出す姿である。打者がゴロを打ったと見た瞬間に、忠実な捕手は必ずマスクをかなぐり捨て(あるいはマスクをかぶったまま)一塁の後ろへ駆けつけるはずである。そして、内野手が悪投して一塁手がパスボールすれば、すぐにそれを拾って、走者の進塁を防ぐか、あるいは、離塁する走者を一塁で刺そうとする。これがチームワークというものの最も簡明な一場面である。
見慣れたものには、それは何でもない光景である。しかし、考えて見ればここに高邁なチームに対する奉仕の精神、その精神に従って行動する義務感と義務を遂行する意思の発露を見るといっても、それは決していいすぎではない。多くの場合、捕手の一塁援護は不必要に終り、かつだれにも認められないのである。(略)およそ縁の下の力持ちといっても、これほど人に認められない力持ちはないであろう。
球が内野手に捕られ、それが一塁に送られた場合でも、一塁手がそれを後逸するのは、十度に何度あるか否か。多くの場合、援護は不要に終わるのである。(略)その時[引用者注:何十か一度、一塁手が球を後逸する]もし捕手がバックアップに来ていなければ、その捕手自身はもちろん、そのチーム全体は落第である。
(略)いやしくチームに対する責任を知るものは、多分は無用であるが、しかし、万一の場合の必要に応ずるためのこの用意は怠らない。これがチームワークであり、またスポーツマンの精神である。スポーツでない実人生の無数の場面において、われわれはこの捕手のそれに類する用意と努力をしなければならぬ。それはスポーツがわれわれに与える最も貴重な教訓の一つであると思う。
(略)全員の各員があえて縁の下の力持ちを避けないことによって、始めて全員の成功がある。
難しく説明しようとすれば、いくらでもむずかしく説くことができる。しかし一塁援護のために駆け出す捕手の用意と覚悟を察するものは、チームワークの何たるかを知るであろう。
(『河流』新潮社 昭和35年11月)
pp.168-170. 下線部は引用者による。
上記の場面は、テレビではなかなか観られない光景であろう。
今年は、私も縁あって友人にお誘いいたき久々にプロ野球観戦したり、春の
慶早戦早慶戦を見に行ったりしたが、どちらもテレビの画面として切り取られていない光景(小泉流にいえば「縁の下の力持ち」に類する場面)を見られたのが良かった。
野球に限らないが、多くの場面において、ひとは<球の行方>に目を向けてしまいがちである。最近の話でいえば、ライブドアVS楽天にせよ、プロ野球合併問題のいざこざにしても、その結末だとか表層だけに目を向けがちと言えよう。。
しかし、その背後に無駄とも思えるような見えない営みがあることは忘れてはならないはずだろう。古田一人の活躍ではないと思うが、比喩的な意味での「捕手」がいてくれたからこそ、今に至っていることだけは記憶に留めておきたいところだ。
って、半分は自分への言い聞かせでもあるのかもしれませんが。
▼私が古田に関連して読んだことはあるのは、平尾誠二(ラグビー)との対談集『
「日本型」思考法ではもう勝てない』と、『
勝利のチームメイク』の2冊しかない。


前者は、ラグビーの平尾誠二氏による対談集。お相手は野球の古田、心理臨床の河合隼雄氏、経営学・組織論の金井壽宏氏ら。
いずれも異色の組み合わせのように見えるが、プロフェッショナルというのは、こういうことかと思わされる対談だった記憶がある。
後者は、サッカーの岡田、ラグビーの平尾、野球の古田の3氏によるクロス対談集。
スポーツっていうのは一見、「血と汗」のように見えるが「知と汗」でもあるんだな、と思わされた一冊でもあった。野中先生風にいえば「知的体育会系」か。
コラボレーションについて語る上でも、スポーツの話題は欠かせないな。
最近のコメント