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読書メモ:U字型の成長過程

朝の連続ドラマ小説『てるてる家族』が面白い。前回の『こころ』も面白かったから、2003年度は私にとって朝ドラの当たり年だったようだ。

 以前も、日記で似たようなことを書いたことがあるかもしれないが、私はたぶん、「U字型成長」の物語を偏愛しているのだと思う。U字型成長とは、たとえば『魔女の宅急便』の主人公、キキのような成長過程を指す。すなわち「落ち込んだりもしたけれど、私はげんきです」型の物語だ。

 U字型成長には、二度大きな山がある。
  • 失いゆく過程
     一つは、今まで出来ていた「何か」ができなくなったり、失われていく過程である。『魔女の宅急便』でいえば、キキが魔法を使えなくなる=飛べなくなる時期。また『てるてる家族』(原作:『てるてる坊主の照子さん』)では、春子や夏子が感じているぼんやりとしたスランプが該当するだろう。夏目漱石の『こころ』の場合は、愛する旦那さんを失うという大きな転換点がある。
  • 回復する過程
     もう一つの山は(敢えて対照的に捉えるほどのものではないが)、出来なくなった何かや、失われた何かが回復したり、以前とは少し違った形で取り戻されたり、変わっていく過程である。
 失いゆく過程にはさまざまなパターンがあるが、回復にあたって転機となるのは、「偶然の出来事」であることが多い。
 『魔女の宅急便』では、主人公のボーイフレンドのトンボが、飛行船のトラブルに巻き込まれたことや、『てるてる家族』の最近の例でいえば、夏子が東京で「てるてるパン」に出会ったことなどがあげられる。
 もちろん本人の志向性なくしては偶然に出会えないが、回復には漸次的な積み重ねのみならず、偶然的な出来事が大きく働くのも事実だろう。

▼このようなU字型の成長を、『てるてる家族』のように短い時系列で重層的に描くか、『魔女の宅急便』や『こころ』のように長い時系列で描くかの違いはあるが、どちらも本質的には同じような構造を持っていると言える。

 もう一つ重要なのは、U字型成長では、外的にはさして何も変わったように見えない点である。キキが魔法のホウキではなくデッキブラシで飛べるようになったとか、結果として成功に導かれたということはあるかもしれないが、それ自体は「劇的」な変化とは言えない。
(JではなくU字であることに留意。心理的には高さは同じである。世の中では一時V字回復などと言われたが、それとも違う)。

 また、失いゆく過程も、取り戻す過程は必ずしも良い話ばかりではない。トラブルに巻き込まれるとか、あるいは喪失そのものが、回復のプロセスに関わってくる場合もあるし、痛みをともなう。
 しかし、このU字型の経験は、少なくても本人にとっては(内的には)、とても意味のある経験になりえるはずだ。

 「落ち込んだりもしたけれど、私はげんきです。」

 糸井重里のこのコピーが、すべてを物語っている、と私は思う。

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