読書メモ:神話と日本人の心
▼オリジナルは2003年10月に書かれたものです。
▼旅先にて。移動中+αで河合隼雄の『神話と日本人の心』を読む。以前、同氏の『中空構造日本の深層』は、いまいち腑に落ちなかったのだが、「中空構造(あるいは中空均衡構造)」の概念は、なかなか魅力的だ。
なんのこっちゃ分からない、という人は「中空構造の対義概念は<中心統合構造>である」、と言うと分かりやすいかもしれない。中心統合構造とは、神のような存在(父性的な存在)が、全体を統合する原理である。キリスト教的原理や、科学万能主義的な価値観を考えれば分かりやすい。
中心統合的な価値観は確かに有用な面もあるのだろうが、最近のアメリカ(キリスト教)とイスラム教の対立や、自然環境問題の例をひくまでもなく、どこか危うさや、限界がありそうな感じがしてならない。
しかし、だからといって、その対極にある母性的な原理(包むというイメージが近い)ですべてがうまくいくとは限らないのが厄介である。
「中空構造」は、その点、父性的な原理と母性的な原理、すなわち相反したり、矛盾するような概念、均衡させうる可能性があるのが特徴だ。『神話と日本人の心』では、これを裏付けるようなさまざまな神話の例と、彼の臨床経験(必ずしもそれは表面に出てこないのだが)が引かれている。
もちろん「中空構造」は万能ではない(そもそも、万能とか万能じゃないとか、その手の価値観自体、近代合理主義的だが)。それ自体はいわば、からっぽなので、父性原理的な価値観がいつの間にか中空均衡を破壊する可能性もある(今のアメリカと日本の関係を考えれば分かりやすい)。
また、父性的な原理と母性を均衡させる、といって容易なことではなく、「命がけ」の仕事であるらしい。確かに中空的になればなるほど<ひきさかれる>感じとか、<ねじれる>ような痛みを伴いそうな気もする。
▼以上のようにまとめてしまうと、本書を分かった気になってしまいそうになるが、たぶん私も読みとれていない奥深さがあって、その感じは伝え切れていなさそうだ。たぶん、年十年もかかって少しずつ理解するのだろう。
周辺と中心の関係とか、そもそも中心化や周辺化(周縁化と言うべきなのかな)の関係だとか、考えさせられるところ大だった。
何度か、往復しながら読む必要があるのかもしれない。
▼旅先にて。移動中+αで河合隼雄の『神話と日本人の心』を読む。以前、同氏の『中空構造日本の深層』は、いまいち腑に落ちなかったのだが、「中空構造(あるいは中空均衡構造)」の概念は、なかなか魅力的だ。
- 河合隼雄(2003). 神話と日本人の心. 岩波書店
なんのこっちゃ分からない、という人は「中空構造の対義概念は<中心統合構造>である」、と言うと分かりやすいかもしれない。中心統合構造とは、神のような存在(父性的な存在)が、全体を統合する原理である。キリスト教的原理や、科学万能主義的な価値観を考えれば分かりやすい。
中心統合的な価値観は確かに有用な面もあるのだろうが、最近のアメリカ(キリスト教)とイスラム教の対立や、自然環境問題の例をひくまでもなく、どこか危うさや、限界がありそうな感じがしてならない。
しかし、だからといって、その対極にある母性的な原理(包むというイメージが近い)ですべてがうまくいくとは限らないのが厄介である。
「中空構造」は、その点、父性的な原理と母性的な原理、すなわち相反したり、矛盾するような概念、均衡させうる可能性があるのが特徴だ。『神話と日本人の心』では、これを裏付けるようなさまざまな神話の例と、彼の臨床経験(必ずしもそれは表面に出てこないのだが)が引かれている。
もちろん「中空構造」は万能ではない(そもそも、万能とか万能じゃないとか、その手の価値観自体、近代合理主義的だが)。それ自体はいわば、からっぽなので、父性原理的な価値観がいつの間にか中空均衡を破壊する可能性もある(今のアメリカと日本の関係を考えれば分かりやすい)。
また、父性的な原理と母性を均衡させる、といって容易なことではなく、「命がけ」の仕事であるらしい。確かに中空的になればなるほど<ひきさかれる>感じとか、<ねじれる>ような痛みを伴いそうな気もする。
▼以上のようにまとめてしまうと、本書を分かった気になってしまいそうになるが、たぶん私も読みとれていない奥深さがあって、その感じは伝え切れていなさそうだ。たぶん、年十年もかかって少しずつ理解するのだろう。
周辺と中心の関係とか、そもそも中心化や周辺化(周縁化と言うべきなのかな)の関係だとか、考えさせられるところ大だった。
何度か、往復しながら読む必要があるのかもしれない。
- 河合隼雄(文庫1999). 中空構造日本の深層. 中公文庫
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