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読書メモ:考える道具

▼オリジナルは2003年8月に書かれたものです。

何をではなく、どのように考えたか
 しばらく在庫切れでなかなか手に入れにくかった『考える道具(ツール)』を、某所で手に入れた。入門書ではあるが、骨があって(まだまだ私なんかは消化し切れてませんが)評判通り良い本だった。
 本書は表向きには、いわゆる哲学の入門書だが、単にさまざまな学説を概説しているだけではなく、哲学者の「考え方」がまとめられているのが特徴だ。本書にならって言えば偉大な哲学者たちが「何を」考えたかだけでなく、「どのように」考えたかが示されている。

 プラトンやデカルトやカントはもちろん、最近では『利己的な遺伝子』のドーキンスや、ポストモダンではデリダまで25章構成で、24人の哲学者とその考え方が紹介されている。例えば、↓のような考え方である。
  • タレス
    「還元」(物事をある部分に分けて捉えること)
  • ゼノン
    「背理法」(一旦、そうではないことを仮定して真偽を確かめる方法)
  • プラトン
    「アナロジーとアレゴリー」(類比と寓喩=概念の置き換え)
  • ヘーゲル
    「弁証法」(Aでもなくでもなくより高次のCを考え出すこと)
  • ヴィトゲンシュタイン(後期)
    「言語ゲーム」(考えるな、見よ)
 ちなみにヴィトゲンシュタインは2回登場している。

 ちなみに、本書は翻訳者が中山元氏というだけのことはあって、参考文献(日本語で手に入るもの)も充実しているし、翻訳も読みやすい。

オッカムの剃刀
 本書を読んで、一つ自分の誤読に気づいた。

 私のアタマの中では、オッカムの剃刀=「説明はシンプルであればあるほど優れている」のように記憶されていた。

 だが、正確には
  • 必要でない限り、存在者を増やすべきではない」(p95)
  • 必然性なしに多くのものを定立してはならない」(p101)
  • 「少なく言えることを、多くの言葉で語ってはならない」(p101)
 という命題が、オッカムの剃刀の正体のようである(下線は引用者)。ただ単純ならば良いってわけではない。しかし私は、いつの間にか「必要でない限り」や「必然性」の部分を「剃って」しまったようだ。

 著者は、「デートを断わられる」という場面でオッカムの剃刀の優れた利用法についてまとめているので、引用してみよう。
 たとえばぼくが、何度デートの提案をしても断れたとする。たしかに彼女はこの半年の間、ずっと忙しかったのかもしれない。デートをするには、ナーバスになりすぎていたのかもしれない。デート・コースに気をそそられなかったのかもしれない。でも、こうした状況でいちばん単純で、ごくふつうに考えつく説明がある。彼女はきっとぼくのことを好きではないのだ。相手がこの想定に反する感情を表明するまでは、彼女はぼくのことを好きではないと考えるのが、ぼくにとってもエネルギーの節約になる(p98)。
 要するに、同じ事態を説明するのに、より本質的ではない説明を削り落とすことが、オッカムの剃刀の正しい使い方であるようだ。
 これは「思考の節約」とも、「単純さの原理」とも呼ばれているそうだ。
 複雑な理論が、シンプルな理論よりも物事をうまく説明できるなら、ぼくたちは複雑な理論を採用すべきなのだ。オッカムは、なによりも単純さを優先したわけではない。説明する力に甲乙のない二つの理論があり、そのどちらかを選択する場合には、単純な理論を選ぶべきだという根拠を示しているだけだ(p101)。
 もちろん、同じ条件で、説明力が同じならば確かに単純な説明を取るべきことが多いであろう。ちなみに「私を取るの、仕事を取るの?」命題においては、何が本質的なのかについて考える方が先である。

▼ちなみにオッカムの剃刀は、ベッカムブームに便乗した剃刀でも、リストカット用のカミソリでも、がっでむ!と叫びたい時に使うカミソリでもない。1285年生まれの哲学者(13~14世紀)、オッカムの概念である。

 私が「オッカムの剃刀」の概念を初めて知ったのは、たぶんカール・セーガンの小説だった記憶がある。映画『コンタクト』の中でもオッカムの剃刀が引用されていたことはよく覚えている。
 人から聞いたり、本で読んだり、映画で知ったことばも、知識は「考える道具(ツール)」として使わないと、、時が経つにつれ、自分に都合よく改変されてしまったり、さびついてしまうことが多いようだ。

 「オッカムの剃刀」については関連するWebページも多いので、関心のある方は、ぜひgoogleで検索してみてくださいませ。  今回、私は↑の物理FAQをあわせて参照させていただきました。

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